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納税者の品位と税理士の立場・・・12

(問題の制度設計・・・6)

 

「問題の制度設計」によれば非違があった場合には加算税を税理士に賦課するという。この制度は

1・「申告の基礎になる情報を会計帳簿などから集めること」を要件としているが1700万円の除外分は税理士は知らないから該当しない。

2・「法令等の動向を知ること」に関しても該当するかしないかは判然としない。

3・「採用しうる処理方法」についても、売上除外を税理士は知らないから助言しようがないが、後段の「申告書の内容を説明すること」に関しては「説明していない」と言える。申告内容を説明すれば当然に仮払金計上額を売上原価に振替え加算したたことや売上高に2000万円を追加計上した事実を話さなければならない。話せば会社は異議を唱えたであろう。

4・リスク説明については、実施したか否かは判然としない。申告書全体の税務リスクもした形跡はない。

 

 以上のようにこの税理士は「問題の制度設計」がいう適正な申告書を作成しているとは言えない。なので納税者法人に成り代わって加算税を負担するとの結論になる可能性がある。

 

(この税理士が負担する加算税の額はいくらか)

 納税者法人は1700万円を売上から除外し、税理士が勝手に2000万円を売上に加えたので納税者法人には非違はない、よって加算税の負担はありえない、というのが納税者法人の主張であったが不服審判所にて棄却されたことはすでに述べた。

 

 結局、加算税の計算基礎になる金額は仮装隠蔽された1700万円である。重加算税35%が課されるので595万円が負担税額である。不服審判所の採決では税理士のした2000万円は重加算税の計算基礎にはならないので、納税者法人が595万円を負担することになるが「問題の制度設計」によって判断すれば異なる結果になる。

 

 問題の制度設計では「適正な申告書を作成した場合」は免責されると読める。瑕疵ある申告書は「適正な申告書」と言えないからこの税理士は595万円負担すべきことになるが、本ケースの場合、瑕疵は納税者法人が原因であって、この税理士には関係はないことを証明すれば税理士は免責される、との考えも生じる。

 

 本件税理士は依頼者とのコミュニケーションがない点で稀な税理士かもしれないが1〜4を実施していても税務調査で非違が見つかる場合がある。税理士が「問題の制度設計」に嵌まらないためには自己の立場に関しての立証が必要になる。

 

<次回予告>

 終局には売上除外された1700万円は税務署の手で(増額)更正された。税理士が勝手に計上した2000万円は一種の粉飾であるから「修正の経理」を行った後、該当税額分は還付されると考えられる。

 この手続きを通して、税理士に「問題の制度設計」が重加算税を課す余地があるのかについてさらに分析してゆく。

- | 08:36 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場...11

(問題の制度設計・・・5)

 

(依頼者と税理士の間にあるもの)

 納税者と税理士は争うものである、との認識が必要である。払いたくもない税金の申告書作成を依頼して何も問題が無くて当たり前、もしミスがあればタダでは済まない。加算税の負担をはじめ不足税額の弁償を求められる。憎い「税」への怨念が税理士に当てられる。たいていの場合は契約も解約になる。

 

 ただ新たに税理士を探すことも面倒なので税理士が謝罪して溜飲が下がればそのまま契約を継続する場合も多い。新規に探し当てた税理士がもっと出来が悪いこともあり得ることも視野に入れての判断である。当然のことであろう。

 

 世間では税理士を「先生」と呼ぶのが通例であるが、この言葉を真に受けてはイケナイ。指導者としての意味ではない場合の方が多い。慣習でセンセーと言っていると思った方が勘違いしなくて良い。

 

 犬のように従順で羊のように逆らうことなく、ロバのように黙々と仕事をするタイプの「おとなしい」税理士には、経営者は面と向かってハラの底に持つ感情を出さない。そのくせ蔭では悪口を言いまくっている。わたしは自分が税理士であることを表に出さないで異業種の人々と交流するのでイロイロ耳に入ってくる。「そうですかあー」と聞き流している。

 

 私は「おとなしい税理士」は性分に合わないので依頼者にまともに問題点を指摘する。

一歩も引かないためケンカになる。ここが重要である。ケンカして相手の「究極の本性」をしっかり見ないとこちらが足元をすくわれることになる。

 

  最良はケンカすることではなく穏やかに諄々と依頼者が外道に落ちないように、時には例え話や「最悪の場合ににどうなるか」などを話すことで、おのずから「ではこの件の処理方法は先生のお勧めになる道を選択します」との言葉を引き出せれば成功である。それができない場合はこちらから「引かせていただきます」と言って関係は終了する。

 

 修業時代に今は亡き師匠から「悪魔に魂を売るな」としつけられた。いま思い出しても有難さに涙がこぼれてくる。その後、税理士登録後も「自分が依頼者の立場であれば税理士にどうしてほしいか」を自問自答し、その答えを指針にして依頼者に応対してきた。

 

 本件の税理士からは依頼者の立場に立って、の視点が感じられない。たとえ相手が机の引出しに売上除外金を隠していることを知らせないような依頼者であっても説明すべきは説明しなければ仕事は完結しない。

 

<次回予告>

 このような実態の税理士に「問題の制度設計」が適用された場合に生じる問題点を検討する。

- | 08:16 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場・・・10

(問題の制度設計・・・4)

前回に指摘した点以外に「問題の制度設計」と「税理士の行為」の関連をみてゆく。

 

税理士の行動の問題点は以下である。

1、資料を納税者法人から税理士事務所に持ち帰ってから納税者法人に決算処理の内容に関して質問した形跡がない点

2、自分がした売上原価への振替に関して説明や告知をしていない点

3、売上高への追加計上2000万円の事実は納税者法人に知らせていない点

4、問題の制度設計3の「採用しうる処理方法などについての助言や作成した申告書の内容を説明すること」を行った形跡がないこと

5、税務リスクについて説明をした形跡がないこと

 

 素朴な疑問は依頼者である納税者法人に対しても生じる。決算資料を税理士に渡して申告まで接点を持たないのは下請け業者に対する態度に等しい。納税額に関心を持つのが普通のところ、このような納税者は稀である。

 納税額に関してその根拠も税理士に聞かないママ、税理士が知らせる税額を素直に支払う点には疑問をもつ。いくら1700万円を机の引出しに隠していたとしてもである。考えられるのは1700万円を除外しているから税理士の依頼した申告内容も納税額にも関心はなかったと考えられる。

 

 ところが税理士が2000を追加計上したことを知って仰天したかもしれない。無関心のツケが回ったと考えられる。

 結局、税務調査によって1700万円を隠していたことが見つかってから、この納税者法人は態度を変え「現金売上1700万円が洩れていたのは税理士が当社に現状の問題点について説明や指導を充分行わなかった」と審判所で主張した。

 

 初めから机の引出しに隠しながら税理士が悪いと人指し指で税理士を指弾する一方、内側に巻かれた中指、薬指、小指の3本は自分を指しているのに気が付かない。ジブンハワルクナイ、ワタシはワルクナイと言い張るのが人間である。仮に税理士が適切な質問をしても納税者法人は事実を話さなかったと考える。この税理士は依頼者に対する態度に甘さがあったのである。

 

<次回予告>

この税理士はどうすれば良かったのか、を考えてみる。

 

- | 08:34 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場・・・9

(問題の制度設計・・・3)

 

不服審判所で「問題になった税理士の行為」と「問題の制度設計」との接点を見てゆく

 

(問題の税理士の行為:再掲

・関与先に来て整理棚に保管されていた経理書類を自分の事務所に持ち帰って帳簿や申告書の作成を行った

・支払い内容が不明の支出は仮払金・前渡金に一旦計上し、自己の判断で仕入勘定に振替えた

・決算にて仕入れ勘定が過大になったため不安になり、売上勘定に2000万円を追加計上して法人税申告書を作成し申告した

・受任した納税者法人に税務調査があり、除外された現金売上金1700万円が指摘された

・納税者法人から「税理士が除外した1700万円を上回る2000万円を追加計上したことは知っていたされた」と主張された

・更に納税者法人は「現金売上1700万円が申告で洩れたのは、税理士が当社に現状の問題点について説明や指導を充分行わなかった結果である」と主張された

 

(問題の制度設計:再掲

1、税理士は会計帳簿や取引書類など申告の基礎になる情報を収集すること

2、法令、課税実務の取扱い及び裁判例の動向を知ること

3、採用しうる処理方法などについての的確な助言や作成した申告書の内容を説明すること

4、その際、特定の処理方法を採用する場合の税務リスクとともに申告内容全体の税務リスクを示すこと

 

 税理士の行為と制度設計を見比べてまず第一に気付くことは、税理士が持ち帰った経理資料から「現金売上」は初めから(納税者法人の手で)脱漏していた点である。納税者法人は初めから税理士には脱漏させた「現金売上」のことは話していない。

 

 税理士としては勝手に会社事務室の机の引出しを開けることはできないから「事務机に隠された1700万円」には気が付かないものの<制度設計1、税理士は会計帳簿や取引書類など申告の基礎になる情報を収集すること>との関係で問題が残る。

 

 制度設計1は、申告の基礎になる情報収集を求めている。ということは網羅的な情報収集を行うことが必要である。事務机に隠された金員には気づかなくても網羅的な情報を求めるには質問し、キャッシュの出入りをチェックし、預金間の資金移動、現金売上の対応する仕入・在庫の存在と動き、粗利益率の年次比較などは実行可能である。

 

 この意味からは制度設計が求める水準は妥当である。税理士は、網羅的な情報を求めた行為の「証跡」を文書によって自ら保管することで不服審判所での「濡れ衣」を防ぐことができたと考えられる。残念ながら税理士の行動からは経理の下請けの姿勢しか感じられない。

 

 税理士に、あれこれ聞かれたり確認されることを露骨に嫌がる納税者は多い。「おとなしい」税理士が好まれる風潮は否定できない。しかし問題が起こったときに納税者は本性を現す。

 

<次回予告>

制度設計が税理士に求める他の点についても検討してゆく。

 

 

 

- | 08:01 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場・・・8

(問題の制度設計・・2)

 前回の「内容」2で税理士は、法令、課税実務上の取扱いなどをカバーしなければならないことに触れたが、コロナを契機に役員報酬の減額をすることが法人税法34条違反にならないためにはどうすれば良いのかについて引続いて検討する。

 

 役員報酬の事業年度途中での変更は臨時改訂事由と業績悪化事由の2種あり、後者は役員報酬の減額の場合に限られることは前回で触れた。

 

国税庁のFAQのQ6での質問(筆者要約)

・イベント会社で、キャンセルが続くだけでなく、今後数か月先のイベントまでもキャンセルされました

・収入減で毎月の家賃や給与の支払も困難な状況です

・よって役員給与の減額をしたいです。減額後の役員給与は法人税法34条の定期同額給与に該当するのでしょうか

 

国税庁回答(筆者要約)

「経営状態が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、貴社のように家賃や給与等の支払が困難となった場合は、業績悪化事由による改定に該当するものと考えられます

 

この例でハッキリしないのは

・「家賃や給与等の支払が困難」の意味がもう一つ具体的ではない。役員給与を下げなければ家賃や給与の資金がなくなる。だから限られた資金内で役員給与の減額をしなければ家賃や給与の支払いが不可能になる。資金が2者択一状態まで逼迫していることを意味するのか。

 それなら銀行や政策金融公庫からの融資や持続化給付金、雇用調整助成金などを動員すれば(実際の資金繰りでは)役員給与も支払えるうえ従業員給与や家賃も払える場合はどうなるのか、が判然としない点である。はたは資金のことではなく損益計算上利益が計上できない意味なのかも不明である。

 

 法人税基本通達という解釈通達が以前から整備されている。ここの9−2−13で業績悪化改訂事由でいう「経営の状況の著しい悪化に関する理由」とは「やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいう」と書かれているがよくわからない。そこで「法人税基本通達逐条解説」という愛読書(実務で頼りになる)を紐解くと「どのような事態が生じたときが該当するかは事柄の性質上、個々の実態に即して判断するしかなく」と断りがあり「著しく悪化」との規定から「一時的な資金繰りや単に業績目標に達しなかった」などは理由に含まれないとある。一時的な資金繰りの一時とは何を指すのか。算数の問題のように正解は出ないのである。

 

 日本税理士会連合会「税理士界」令和2.6.15号(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う税制改正に関する建議書)では「法令等の解釈に関する事項」で、現状では「業績悪化改訂事由」による給与改定をすることになるが、業績が回復した場合には次の定時株主総会まで役員給与を増額できないことになる。緊急事態宣言が出されての営業自粛で役員が職務執行できないのであるから「臨時改訂事由」に該当すると解釈をするよう要望している。

 

 以上のような状態の下で税理士は責任を持った結論を導かなければならない。「著しく」が曲者である。何を以て著しいのか膨大な裁判例を渉猟しても、同じ人間がこの世に居ないように同じ会社もない。探して判例を見付けても類似事案でしかない。最後は税理士の論理的首尾一貫性と説得力、説明的能力が頼りである。

 

<次回予告>

以上の実情のもと問題の制度設計が税理士に要求する諸点につき問題点を検討したい。

 

- | 16:50 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場・・・7

(問題の制度設計・・その1)

内 容

、税理士は会計帳簿や取引書類など申告の基礎になる情報を収集すること

法令、課税実務上の取扱い及び裁判例の動向を知ること

、2を踏まえて採用しうる処理方法などについての的確な助言をして作成した申告書の内容説明をすること

、その際、特定の処理方法を採用する場合の税務リスクとともに申告内容全体の税務リスクを示すこと

、以上1〜5を経て「適正な申告書」を作成している場合を除き、加算税等は税理士に賦課する

 

以上のなかで問題と考えられる点を摘出する。

:「申告の基礎になる情報」が納税者の手で既に「売上の過少計上」「資産の過少計上」「経費の過大計上、架空経費の計上」などの加工がされていた場合には、それ以降のすべての計算過程で事実ではない計算が進行する。

 

 税理士と依頼者とは契約によって合意し一定の信頼関係で仕事を受け、依頼している。税理士は検察官でも税務調査官でもないから依頼者から提供された「申告の基礎になる情報」に関して検査する権限はない。

 専門家として依頼者に盲従することなく、懐疑的な態度で依頼者から提出された「申告の基礎になる情報」に関して重要性を念頭に質問、証憑突合、検算、議事録・契約書等の確認、比率分析を行なうのが普通の業務水準と考える。

 これらの手続きを実施したことを決算調書(事務所によって呼称は異なる)に残しておいても(結果として)過少申告になることは考えられる。その原因としては例えば棚卸表への会社担当者の単価記載桁違いや資本的支出と修繕費の認識誤りなど善意(意図なく)であっても起こり得ることである。

 

 税理士が不勉強で法令の改正に気付かないため旧法を適用した場合などは、税理士の落ち度とされても致し方ないと考えても、「課税実務上の取扱い」に関しては国税庁の情報に注意してキャッチしても、個々の事業体で微妙に適用の可否は異なる場合が多い。一律に割り切れるものではない。まして裁判例の動向を的確にキャッチしても、その事例が受任している事案に適合するのかの判断は容易ではない。

 

 例えれば新型コロナウイルスの影響で役員報酬を大幅に減額する事例が多い。この件に関しては法人税法34条1項1号で役員報酬は「定期同額であること」が厳格に定められている。事業年度の途中での恣意的な利益操作を防止するためである。

 例外的に「臨時改訂事由」と「業績悪化改訂事由」が法人税法施行令で定められている。業績悪化改訂事由に関しては減額する場合に限ると釘を刺されている

 

<次回予告>

 コロナの影響で役員報酬を減額することが法人税法34条違反にならないためには「新型コロナウイルス感染症に関するFAQ」<以下 FAQ>が令和2年3月に国税庁ホームページで公表され役員報酬の減額については4月13日に2例の質疑事例が追加公表されているので、これ等の適用にかかつている。これらを用いて適正な処理が可能なのか検証したい。

- | 08:21 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・・6

(決算申告時の依頼者との合意)

 いわゆるインフォームドコンセントであるが、これをしっかり行うことがスキを作らない要点である。税務調査で調査官から非違を指摘された場合の防御の論理を平素のフィールドワークの資料を基に用意したうえ、依頼者に対し、このような主張をあなたの代理人として行いますが宜しいか、とやさしく説明し、そうしてください、そこまでは求めませんから問題が起こらないような処理をお願いします、などの率直な遣り取りが紛争を未然に防ぐ。

 

 このような基本のキがされていない税理士の執務姿勢を見ていて、納税者法人側も、よろしくないココロが首をもたげてきたとも推測できる。

 

(会計処理がヨロシクない)

 決算の説明不十分とも関連するが、支払原因不明の支出を仮払金や前渡金に計上することはよくあることであるが、これとて会社の方で資料が手許にないなどの事情もある。

 それゆえ決算までの間に納税者法人に対し証憑類の準備、証憑類がない場合は次善の証拠や支出担当者の補足説明書などを備え、決算処理でしかるべき会計基準に沿った会計処理をするべきところを、勝手に売上原価に加えた。費用・収益対応の大原則に逸脱した処理をすれば売上総利益率が歪む結果になることは会計の初歩である。

 

 ゆがんだ粗利益に不安になったから(勝手に)売上を追加した。勝手にしたことは会計の主体が依頼法人であることも失念している。

 

(税理士の心理)

 依頼者である納税者法人に問題点を進言することなく、問題を起こしたくない、との内向きの気持ちから架空売上2000万円を計上したと推測できる。

 

 不服審判所にて「税理士の追加計上した2000万円は当社の益金から減算すべきである」との主張は、本件税理士ではない他の専門家によるアドバイスであろう。自分が作ったほころびに付け込まれたうえ非難される種になっている。

 

<次回予告>

このケースを「問題の制度設計」に当てはめて検討してみます。

- | 07:35 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・・5

(不服審判所で争われたケースの特異性)

 前回に述べたようにA1.2.3、B1.2の類型のうちA,呂海離院璽垢寮罵士<以下 本件税理士という>は関わらないから外れ、A2も本件税理士は売上除外に同意していないから該当しない。A3が最も近い類型であるがこの例は税理士を「試す」ことで売上除外の有効度をチェックし、その結果次第で別のスキームを考える手立てにしようとするものである。本件税理士は最初から蚊帳の外であり、試されてもいない。

 このように納税者法人は売上除外行為で本件税理士と一線を画しており、本件税理士もその事実を知らない。むしろ本件税理士側の行動に特徴がある。

 

(本件税理士の行為は専門家の仕事ではない)

、外注経理業者ないし他人の指揮命令に従う経理事務員の行動に近い。納税者法人に年数回来てよっこらしょと経理伝票の束を事務所に持ち帰って「作業」している。持ち帰るのは良いとしても伝票の通査や確認、証憑突合、質問などはした形跡はない。

 決算書作成の際には、資料が他に無いかを確認することも必要である。事務フローから銀行預金への不審な(除外売上金の還流を疑われる入)入金がなかったのか。資金と商品の流れ図を作成しなかったのか。

 

経営者に対する質問と回答を記録しておくのは必須事項である。調書、カルテ、決算メモなど呼称は何でもよいが税理士事務所で保存し、税務調査の際の「質問検査」の対象外である唯一自分を守るこのたぐいの書類は必要である。

 

決算書決算内容の説明をしていない。納税者法人が審判所で主張するように、最小限の説明すらしていない。決算説明をした後「説明を聞きました」との一筆が必要である。その書面に税務リスク列挙し依頼者に理解と覚悟を求めることは税理士の通常の業務水準である。

 

、「暴君治下の臣民は暴君よりも暴である」(魯迅評論集71頁)のたとえのように納税者は例外なく税が少ないことを希望しそのための方法を考える。いわば納税者と課税庁は潜在的対立関係にあるから、A1.2.3や本ケースのような納税者法人はよくある。

 

 その認識のもとで税理士は相手の人相、眼つき、歩く後ろ姿、横顔、言葉尻、ふと漏らす一言などから依頼者の品格を察知することは必要である。この仕事を十年もすれば「人は見かけによらない」ことを思い知る。

 

 税というレントゲンを照射されることで「究極の本性」が浮かび上がる。税理士であれ会計の専門家は「相手の顔の後ろにあるものを見よ、、」が鉄則である。本件税理士からはこのような姿勢は微塵も感じられない。

 

<次回予告>

 本件税理士が行った仮勘定の売上原価算入から架空売上計上の過程での問題点を見てゆきます。

 

- | 08:42 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・・4

 最初に断っておきたいが、この事例のような税理士は筆者の周りには誰もいない。筆者の知る税理士は例外なく(言い方は丁寧であるが)言うべきことを依頼者である納税者に諄々と伝える人ばかりである。それが受け容れられない場合は関与を降りた、との仲間内での打ち明け話も多い。

 別に、時々であるが財務大臣による税理士懲戒処分の事例が公表される。大胆な売上除外や架空経費計上による不真正税務書類の作成が原因である。これらは、税理士が不正であることを認識して行っている。その結果、税理士法の定める懲戒処分を受けている。

 

 本稿で問題にする「制度(税理士への加算税代替課税)は、性格的にNOと言うべきを言えなかったり<下記分類A2>や、「通常の専門家としての水準」で申告業務を行っても不正の証拠を見つけられないまま申告し、その後に税務調査で多額の仮装隠蔽が発見された場合や、法令の適用につき税理士の解釈が国税当局と相容れない結果、修正申告または更正処分を受け、過少申告加算税や重加算税の賦課決定処分を受けた場合<下記分類1>にあてはまる問題である。

 

分類として、税理士関与を前提に税務調査の結果加算税が課されるケースは以下に整理できる。

 

A悪質な納税者が意図して

1.自分だけで(税理士に秘して)過少な申告をする場合・・・・・・・・・税理士には責任はない、税理士にはズルをした者の加算税を負担する筋合いはない。

 

2.税理士を巻き込んで過少申告をする場合・・・・・税理士は懲戒処分を受ける。アドバイスが不十分な場合、納税者から損害賠償を請求されることもある。

 

B過少申告の意図はないが、税金が少ないことを望むあまり曖昧なまま税理士に申告を依頼した結果

1.非違が発見され、過少申告加算税または重加算税が結果として課された場合・・・税理士に責任があるか否か「通常の専門家としての水準」を果たしたか否かで、依頼者・税理士間の争いになる。税理士の落ち度である場合、加算税は損害賠償の一環として税理士が負担する場合もある。

 

2.事前に税理士から、税務署と見解の相違が起こり、過少申告加算税が課されるリスクの説明を受け、納税者も覚悟していた場合(仮装隠蔽はこのケースで起きないから重加算税は生じない)・・・・すでに問題点を指摘済のため税理士には責任は生じない。加算税は納税者が負う。

 

(Aには第3の類型がある・・A3 )

 それは、A2のように税理士を同意のうえ巻き込むのではなく、ズルをしたことを税理士に秘したうえ「税理士を騙せたら税務署も騙せる」との考えから税理士を「試す」納税者の存在である。

 

 税理士は「試された」のであるが、納税者が厚かましくも税理士に加算税の負担を求めた場合は、税理士は責めに帰すべき事由がないことを立証しなければならない。税理士はこの立証のためにも契約書や助言の内容に関して書面等の備えが必要である。

 

 要するにA2.3B1責任の所在がグレーである。ここへ加算税の代替課税制度が実施されれば、更に紛争が混迷化する。

 

 以上パターンに割り切ったが、このようなA2.3やB1のどちらでもないのが本事例である。

 

<次回予告>

本事例についての納税者と税理士のそれぞれの責任を分析してゆく。

- | 08:32 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・・3

(問題の制度設計とは以下の2点である)

 

1・複雑な税制の情報収集を税務代理人(以下 税理士)に義務付け、それができず非違があった場合に税理士に加算税を課す。但し適正申告の場合は除く、という内容である。米国で提言されている。税理士制度のない米国で悪質申告代理業者が依頼者に不正に還付金を利得させるため過度に所得を低くした申告書作成をすることが横行しないためとの趣旨である。

 

2・更に不正事実を発見したら、税理士は税務署に通報する義務も課すべきと学者によって提言されている。

 

 要するにその意味するところは税理士が納税者をそそのかすことで税金を過少申告しないように、正しい適正な申告をするようにリードしなさい。依頼者がズル(不正)をした事実を知ったら税務署に即 通報せよ、という代物である。

 

この制度設計を、このたび取り上げた不服審判所のケースに当てはめてみたい。

 

ポイントは次の3点である。

1、納税者法人が不正をしたか

2、税理士はその事実を知っていたか

3、通謀して納税額を過少にしたり過大な還付金を得ようとしたか

 

その答えは明白である

1、不正は明らか。除外した現金売上金と関係書類を正規(類を収納する整理棚とは別に事務机の引出しに隠していた。

2、税理士は1700万円の売上除外の事実を知らない。知らされてもいない。

3、通謀はない。逆に税理士は売上計上額が不足していることを職業上のカンが働いたのかどうかは知らないが、納税者法人に知らすことなく自分の手で2000万円を追加計上した。

税務調査でこのことを知った納税者法人はこの事実を奇貨−<利用すれば意外の利を得る見込みのある物、機会・・広辞苑>として、税理士には現金売上があることを伝えていた、それを知ったから税理士は売上の追加計上をした。重加算税が課せられる金額はない、と主張した)

 

<次回予告>

 納税者が自分はワルクナイ、税を免れる意図はない、悪いのは税理士だァ、と強弁するのは想定内である。それを見越して税理士は手を打たないと自分の立場がないことは常識と考えている。ところが本件の税理士は自分から罠に嵌まりに行っている。その行動は奇異というより滑稽ですらある。

 このような行動の背後にある意識(臆病さ、直言しない、できない、コミュニケーションできない)を見れば問題の制度は機能しないばかりか、逆の効用をもたらしかねない。

- | 08:15 | pookmark

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