講師税理士から電話があり追加事項として
・第5案で行けば、資本金が1000万円増加することになるがこの点に抵抗があるのではないか
・その対策の話のために電話した。増資の反対に減資ができること。
・減資には有償減資と無償減資がある。有償減資は会社が減資部分をキャッシュで株主であるあなたに
払い戻すこと。
・無償減資は資本金から減資分1000万円を「その他資本剰余金」という科目に振替えることである。
事業家Qも最近は知識が増したので以下のように反論することができた。
・有償で減資するにはキャッシュを1000万円用意しなければなりません。銀行にようやく理解しても
らって500万円借りて退職金などに使ったので、とてもキャッシュアウトする金額はありません。そ
れに、お金が会社から戻ってきたら、受取った私に万一のことがあればその金額には相続税がかけら
れますね。
・無償減資は貸借対照表の純資産の部の項目の中での移動ですから「資本」が「その他資本剰余金」に
変わっただけなので形式だけですね。資本に変わりはないから相続税の申告の際には私の所有資本と
して課税されますね。
このように答えながらQは素早くアタマを回転させ、第5案は危険であると思った。何が危険かというと、自分が貸付けた3000万円のうち1000万円は、実際にはキャッシュアウトして返す資金はないから結局、資本の増加になる。この部分は今後事業が成長すればするほど株式評価額が高くなり、自らの相続税に跳ね返ってくる。
逆に事業が衰退すれば相続税の負担はなくなるがこの時は、銀行借入金が返済できず破産の運命になる。どの道を辿っても事業をしている限り税金が追ってくるし、税金が追ってこないなら借金に追われ、果ては自滅しかない。
どちらであっても守りに入らず前へ進むしかない。
枠にはまった日々が嫌で、独立して事業を始めた時には狂おしいほどに仕事に打ち込んだことを思い出した。室町期の閑吟集にある「何しょうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂え」の勢いであった初心を思い出したQは、繰越欠損金の金額1700万円までQが債権放棄し、会社では債務免除益を出す第3案を採用することに決した。
これで累損はなくなりQ社の追い風になるだろう。残りの「社長借入金」1300万円は気にしないでQ社の負債の部に残すことにした。
講師税理士にその旨連絡した。それが「自然体」で良いと思うと彼は答えた。自然体という言葉が事業家Qの心に残った。
<次回予告>
顧問税理士の変更を検討する段階に来た。