(問題の制度設計・・・5)
(依頼者と税理士の間にあるもの)
納税者と税理士は争うものである、との認識が必要である。払いたくもない税金の申告書作成を依頼して何も問題が無くて当たり前、もしミスがあればタダでは済まない。加算税の負担をはじめ不足税額の弁償を求められる。憎い「税」への怨念が税理士に当てられる。たいていの場合は契約も解約になる。
ただ新たに税理士を探すことも面倒なので税理士が謝罪して溜飲が下がればそのまま契約を継続する場合も多い。新規に探し当てた税理士がもっと出来が悪いこともあり得ることも視野に入れての判断である。当然のことであろう。
世間では税理士を「先生」と呼ぶのが通例であるが、この言葉を真に受けてはイケナイ。指導者としての意味ではない場合の方が多い。慣習でセンセーと言っていると思った方が勘違いしなくて良い。
犬のように従順で羊のように逆らうことなく、ロバのように黙々と仕事をするタイプの「おとなしい」税理士には、経営者は面と向かってハラの底に持つ感情を出さない。そのくせ蔭では悪口を言いまくっている。わたしは自分が税理士であることを表に出さないで異業種の人々と交流するのでイロイロ耳に入ってくる。「そうですかあー」と聞き流している。
私は「おとなしい税理士」は性分に合わないので依頼者にまともに問題点を指摘する。
一歩も引かないためケンカになる。ここが重要である。ケンカして相手の「究極の本性」をしっかり見ないとこちらが足元をすくわれることになる。
最良はケンカすることではなく穏やかに諄々と依頼者が外道に落ちないように、時には例え話や「最悪の場合ににどうなるか」などを話すことで、おのずから「ではこの件の処理方法は先生のお勧めになる道を選択します」との言葉を引き出せれば成功である。それができない場合はこちらから「引かせていただきます」と言って関係は終了する。
修業時代に今は亡き師匠から「悪魔に魂を売るな」としつけられた。いま思い出しても有難さに涙がこぼれてくる。その後、税理士登録後も「自分が依頼者の立場であれば税理士にどうしてほしいか」を自問自答し、その答えを指針にして依頼者に応対してきた。
本件の税理士からは依頼者の立場に立って、の視点が感じられない。たとえ相手が机の引出しに売上除外金を隠していることを知らせないような依頼者であっても説明すべきは説明しなければ仕事は完結しない。
<次回予告>
このような実態の税理士に「問題の制度設計」が適用された場合に生じる問題点を検討する。