(問題の制度設計・・・まとめ3)
前回に「問題の制度設計」が示す内容を裁決例を題材として検討した場合に「残る問題」として3つの疑問点を挙げた。
1,2は加算税の性質から考えるものであり3は会社の経理から問題を詰めようとする。
1番目の疑問点
重加算税を納税者法人に課すことに替えて税理士に課すことで、納税者法人が重加算税を免除される理由は何処にあるのか?
2番目の疑問点
税理士が納税者法人に代わって重加算税を負担する道理と法律上の根拠はあるのか?
3番目の疑問点
納税額の過不足は最後は会社経理に反映される。会社経理の主人公こそが重加算税負担の原因を作った人物ではないか、税理士は主人公か?
以下に結論を示し、次にその理由を記す。
1、結論:納税者法人が重加算税を免除される理由はない。
理由:重加算税が課された原因は1700万円を隠蔽したからであり、その行為は当該法人のした行為に他ならない。この裁決例では税理士は蚊帳の外であったが、たとえ税理士が積極的に売上除外を提言し除外行為に参加したとしても納税者法人が重加算税を免れることはない。事例として取締役と監査役が会社代表者に報告せず隠蔽していた場合でも重加算税は納税者法人に課され取締役や監査役に課されることはない(国税通則法精解673頁)。代表者は会社業務に関する一切の権限を有する(会社法349条4項)から当然の帰結である。
付帯税が本質である重加算税は本税(本例では法人税)の納税義務者に付帯して課される。米国では不正に過少申告した場合、納税者だけでなく税理士にも千ドルまたは申告手数料の50%かいずれか多い金額の罰金が課されるが税理士に課されたからといって納税者が免除されることはない(税法学566・235頁)。
米国のある大学教授がしたためた論文にはany penalties or interest that would otherwise be assesed against the taxpayer should be assesed,instead against the preparer(以下略)と納税者(tax payer)の代わり(instead)に税理士(tax preparer)に負担(assess)させよとあるが、公式なものではない。
2、結論:税理士が納税者法人に代わって重加算税を負担する道理はない。法律上の根拠もない。
理由:重加算税を含む加算税は税務申告の適正性を保つために納税義務者に課されるものであり不正な申告書を作成したとしても税理士が納税義務者でもないのに重加算税が課されることはない。税理士には別の制裁がされる。
もしこのような制度が実施されたら今以上に過少申告が増加し税理士にペナルテイを肩代わりさせようとすることが横行すると考えられる。加算税の立法趣旨である「申告秩序維持のため(中略)納税義務違反の発生を防止する」ことの逆になる。
<次回予告>
3番目の点に触れ、その他補足説明を行う。