数字が語る事業の潮時、変わり時 - AI・RPAの先にあるもの

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経営の要点を数字の観点から読み解くブログ。完結しましたので当所のHPに移設しました。
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納税者の品格と税理士の立場・・・18

(問題の制度設計・・・11)

 

(行政制裁を納税者ではなく税理士に課すことの問題点)

 加算税は申告秩序維持のためである。対象は納税義務の違反者である。「これにより納税義務違反の発生を防止し、もって納税の実をあげようとする行政上の措置」(国税通則法精解669頁)と立法当事者が説くように納税義務者があくまでも対象である。

 

 仮に税理士が無知な納税者に過少申告を吹き込んでも重加算税の対象は納税者であり、納税者に隠して税理士が勝手に過少な申告書を作成しても加算税の対象は納税者である。

 税理士がこれらの行為をしたことは納税者と税理士間の争いを生じても納税者に替えて税理士に加算税を課すことは筋違いである。いうまでもなく税理士には税理士法上の処罰がなされる。

 

 

(逋脱犯の刑事罰と加算税の違い)

逋脱犯が成立するためには以下の4要件が必要である(経済刑法研究866頁)

ア:誰が主体か

イ:偽り不正の行為が実行されたか

ウ:税を免れたか

エ:行為(イ)と結果(ウ)の因果関係の認識があるか

 

 裁決例に当てはめてみればアは会社代表者であり、一切を任されていた工場長並びにその妻も該当すると考えられる。工場長やその妻は代表者が納税義務者であることの認識と机の引出しに売上を隠すことは脱税を行うとの認識があると考えられるから共犯になる。税理士にはァからエはあてはまらない。

 

 それと重加算税の場合は「計算の基礎となる全部または一部」について仮装隠蔽することが要件(国税通則法68条1項)であり「その客体は益金、損金または個々の会計事実である」(経済刑法研究863頁)が、逋脱犯の場合はその法人の事業年度の所得を一体不可分として逋脱罪が適用される。

 

 こうして全体を一体として見れば、代理人にも適用される逋脱犯が適用されるのは会社代表者、工場長並びにその妻であり税理士は射程外である。

 

 以上のように加算税・重加算税は納税義務者にのみ適用され、税理士に課税を付け替えることは趣旨から外れる。また代理人にも適用される逋脱犯の刑事罰は厳格な構成要件を当てはめれば、この税理士は代理人の立場にすらならない。

 

 裁決例から離れて一般的に見れば、税理士が積極的に脱税指導をした場合でも重加算税は課されないが、逋脱範に該当することは考えられる。要するに犯罪を構成するに至らない過少申告のばあいの加算税を税理士に課する理由は見当たらない。

 

 税理士に加算税を課す論理が通るならば、逆に税理士が説諭して偽りの申告を改めさせた場合に税理士に国が報償金を支払うことに「論理的」にはつながってくる。考えられない話である。

 

どの角度から検討しても税理士に加算税を付替えて課する道は見えない。

 

<次回予告>

 そろそろ、まとめに入ります。今月中旬にこのシリーズは完結し、少しお休みをいただいてから「数字が語る事業の潮時、変わり時」のタイトルで7月31日に再開します。コロナで変わってゆく先行きに焦点を当てます。 

 

- | 08:43 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・17

(問題の制度設計・・・10)

 

(二つの制裁 1.逋脱犯の刑事罰と2.仮装隠蔽の行政制裁:重加算税)

1は犯罪を構成する。偽りその他不正行為をした場合である。法人に対するこの罰則を定めた法人税法159条では法人の代表者だけでなく「代理人」も処罰の対象に加えている。

 

 刑罰であるから「故意」が要件である。具体的には以下の3つの認識があることが犯罪の要件である。

   ・その法人に納税義務があることの認識

   ・その法人の業務に関して脱税を行うとの認識

   ・不正行為の認識

 

 代理人の場合は、会社経営者と共謀した場合や教唆が該当するだろう。会社経営者と共に犯罪者になる。税理士法での処分もされる。

 審判所で争われた事例に当てはめれば税理士は共謀していないことは明らかであるから法人税法159条の処罰はない。

 

2、仮装隠蔽を行ったことで行政制裁を受け重加算税を課される事例では制裁の対象は納税者法人だけである。仮に税理士が積極的に仮装隠蔽に関与した場合は税理士法の制裁があるが重加算税を会社と共に税理士が負担する規定はない。

 

 現実にこの税理士は蚊帳の外であり損害賠償の対象にすらならない。

1,2に共通するのは、税理士が1や2に該当するか否かが「問題の制度設計」に比べて比較的分かりやすい点である。

 

(問題の制度設計)

 「十分な情報収集と申告内容の説明が不十分」である場合は加算税を税理士に課し、その代わりに納税主体である会社には加算税を免除するとの「問題の制度設計」では積極的に過少申告に関与したか、していないかが判然としない場合でも、関与実態ではなく「適正な申告書であったか」否かの結果だけで判定し、さらに「申告内容の説明やリスクの説明をしたか」どうか、という測定不可能な基準で納税者の加算税を免除し、税理士に加算税を課すと言っている。

 

 積極的な不正関与、共謀の有無などの要素を排し適正申告かという外形の結果と「(決算内容やリスクを)説明した、聞いていないとの水掛け論になる曖昧な基準しかないことは新たな争いの原因を作りかねない。

 

 残る問題は

1、何が適正申告なのか、

2、どこまで説明したら税理士が免責になるのか、

 税理士は説明したといっても聞く方の法人側では聞いていないと言うであろう。自社に掛かる重加算税負担がなくなるならば、渾身の智恵を巡らせて「聞いていない」と強弁すると考えられる。

 

 そもそも複雑な会計と税法をいくらワカリヤスク説明しても理解できない経営者が多い。聞くふりだけする経営者も多い。人間は理解できないことは「聞いていない」と思うのではないか。それも申告して数年(除斥期間5年までの)経過しての税務調査において明瞭な記憶が無いのは自然かもしれない。

 

<次回予告>

 税理士は自己を守るには説明を録音しておくことでデフェンスするなど、依頼者との信頼関係に水を差す不愉快で不要な負担が生じるだけでなく、悪質納税者は税理士の足もとをすくう方策を考えるかもしれない。「問題の制度設計」が申告納税制度において有効な制度なのか否かを検討する。

 

- | 08:39 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・16

(問題の制度設計・・・10)

 

前回は個人事業や芸能人などを例として見てきた。では会社の場合はどうか。

 

 会社内部での不正は税理士実務ではしばしば遭遇する。従業員による売上の着服、売掛金のラッピング、預金のカイティング、在庫の横流し、経費の流用がよくあるパターンである。税理士業務では特別に契約する場合以外はこれらの防止は業務範囲外である。但し会計組織において問題が起こらないように(例えば記録・保管・承認の分化などの)改善の提案はする。なぜなら、筆者は過去に相当の注意意義務を欠いたとして損害賠償請求はされなかったものの、顧問契約は取り消された経験があったため、私の場合はそこまでの目配りをしたことを文書にして残すことをしてきた。

 

 余談になるが米国ではFraud(経理不正)の防止と摘発は会計専門家の一分野である。CPE(継続研修)ではかなりの研修時間が投下され年に数回、Fraudのカンファレンスやシンポジウムが開催されている。

 

 以上のうち納税額の減少につながるのは売上の着服である。

法人の不正は3パターン考えられる。

 

パターン1:経営者が売上を除外した場合

パターン2:経営者から経理を任された人物が(経営者と共謀して)売上を除外した場合

パターン3:経営者から経理を任された人物が(経営者に知らせないで)売上を除外した場合

 

 法人とは称しても大会社であれ零細会社であれ法人自体が不正行為はしない、できない。法人がレストランで食事できないのと同じである。行為の主体は法人組織であれ(個人事業は勿論のことであるが)常に人間である。

 

 「問題の制度設計」を当てはめて税理士に加算税を課すことができると考えられるのはパターン1と2について税理士が感知できるだけの手掛かりがあるのに確認を怠った場合である。手掛かりすら知ることができない場合は情報収集できなかったとしても理由があるので対象から外れる。まして法令の動向やリスク説明については接点すらない。

 

 パターン3は取締役の注意義務が問われるのであって、会社の問題であり、税理士が「情報を収集」する範囲外である。

 

 「税理士の情報収集が不十分」である場合の該当例は少ないのが結論である。

 

 以上のように、現実に該当する例が少ないとしても、「税」を納税者本人に賦課しないで国の手で税理士課税に転換することは税を負担する者を勝手に変更することになり別の問題がある。税理士が悪質な処理をしたのなら税理士には税理士法での制裁と依頼者からの損害賠償が待っている。ここで償いは済むところ、国が「本来の納税者の加算税を免除し、同額を税理士に付け替えて新たな納税義務者を「創造」することは問題である。

 

<次回予告>

 脱税の場合と過少申告加算税や重加算税が課される場合を比較して検討する。脱税の場合の制裁対象には代理人が含まれる両制度の違いから「問題の制度設計」のほころびを検証したい。

 

 

- | 08:30 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・15

(問題の制度設計・・・9)

 

 この事例に「問題の制度設計」を当てはめると、賦課された重加算税は税理士が「十分な情報収集」を行わなかったゆえ税理士が負担することになるだろう。

 

しかし世の中の現実は単純ではない。

 

 本事例では、現金売上を除外して机の引出しに入れることは社長と工場長夫妻の間では合意があったと裁決書からは読取れる。除外された金額は1700万円と税務調査で分かったが果たして本当に1700万円なのか。

(この裁決例では以上に述べた事実を超える内容は明らかではないので、此処からは、この事例を検討の題材として使用する。審判所で争われた事例からは離れる。関係ないことをお断りしておく)

世間でよくある事件を当てはめてみる。

 

(法人の組織の階層と税務申告に表れた「意思」の存在する場所)

 工場長が日常実務をしているから工場長はXXXX万円を引出しに隠し、工場長の妻は工場長に内緒でXXXX−Y=ZZZZ万円の金額が隠匿額と考える余地はある。

 

 社長の認識ではWWWW万円の売上を除外したつもりが工場長の手でXXXX万円に減少し、最後は工場長の妻が抜き取ってZZZZ万円になることも考えられる。WWWW>XXXX>ZZZZである。本事例ではZZZZすら税理士は知らされていない。

 

 零細企業で夫が代表者で妻が経理を担当しているケースで夫に内緒で妻が売上から抜き取るケースは稀にある

 

 芸能人や力士の脱税では「税理士にすべて任せてあった、ワタシは知らない」との答えはメディア報道の定型である。しかしこの場合、芸能人や力士がゼイキンの処理方法を自分で画策することは考え難い。プロダクションや秘書が芸能人などから委任される場合や、一任されているうちに出来心が生じる場合も想定できる。そこへコンサルタントが介入した結果の金額が「先生この金額で申告をお願いします」との口上で確定申告書の作成を依頼されるのではないだろうか。

 

<次回予告>

 納税者の意志が税理士にストレートに伝わる(単純な)例であれば税理士が「十分な情報収集」をしなかったことが原因で税理士に加算税を賦課する論理はあり得ないではない(後述するが「税」を納税者本人に賦課しないで国の手で税理士課税に転換することは税を負担する者を勝手に変更することになり別の問題がある。税理士が悪質な処理をしたのなら税理士には税理士法での制裁と依頼者からの損害賠償が待っている。ここで償いは済むところ、国が「本来の納税者の加算税を免除し、同額を税理士に付け替え新たな納税義務者を「創造」することが問題になる。

 

 

- | 08:21 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・14

(問題の制度設計・・・8)

 

問題の制度設計の要点

1・十分な情報収集を行うこと

2・適正な申告書を作成すること

3・1と2ができていない場合は加算税を税理士に賦課する

4・加算税を課されることを当該税理士が不服なら、その妥当性を当該税理士が争えばよい。専門的知識があるから可能であるだろう。

5・十分な情報が税理士に与えられない場合は、依頼者が加算税を負担すルことになる。

 

問題点

1、十分な情報収集ができれば適正申告になるのか。

 

そうとは言い切れない。

 「十分な情報収集」とは何を以て十分とするのか。「適正」とはどのようなことを指すのか。申告是認=申告書が適正であれば十分な情報収集をしたことになるのか。双方に関係はない。

 

 税理士が十分な情報収集をしなくても適正申告の結果になる場合もある。その逆もあり得る。

 納税者の中には税理士に情報開示を積極的にすることを好まない会社や人物もある。税理士は専門家として必要な質問を行ったことや、手に入る関係書類を入手し確認したことを記録することで役割を果たした事の証明ができる。この証明ができない場合は、税理士の突っ込んだ質問に対し曖昧な回答しかしない納税者の咎を税理士に付け替えることになる。

 あらかじめ税理士として疑義がある点を指摘しておけば税理士の姿勢には責めに帰すべき点はない。

 

2、会社という組織から税理士に伝わる情報の多様性

 この裁決例でも、社長は工場長に業務全般を任せていた。現金売上に関する領収書の控えなどの証憑類も工場長に任せ、例の引出しの管理は工場長とその妻が行っていた。

 税理士には整理棚の書類しか渡さなくて引出しの除外金のことを伏せていたのは社長か、工場長か、その妻か、判然としない。

 

<次回予告>

 税理士に会社の経理情報が伝わる経路には間に従業員が介在するばあい、事実が税理士に伝わらない可能性もあり得る。

 

- | 08:31 | pookmark
納税者の品格と税理士の立場・・・13

(問題の制度設計・・・7)

 

ここで課税処分について事実関係を整理しておきたい。

 

更正の日:平成29年3月24日

処分対象事業年度:平成27年10月1日から平成28年4月30日終了事業年度

税目:法人税申告につき重加算税の賦課決定処分を受けた。

 

(実際には平成26年9月終了事業年度、その翌期の平成27年9月終了事業年度にも法人税に関し重加算税の課税処分を受けている。3期に亘って重加算税賦課決定処分を受けている。また本件税理士は27年9月終了事業年度と28年4月終了事業年度の2期に売上勘定に勝手に計上していたが説明の簡便のため平成28年4月期のみに限定し計数も単純化した)

 

課税処分がされたのは平成29年3月であるから直前事業年度の内容に関しての処分である。

 

 一般的には粉飾があった場合は法人税法129条にて納税者法人が「事実に係る修正の経理をし且つ修正の経理をした事業年度の確定申告書を提出するまでの間は、税務署長は更正をしないことができる」と定められ、仮装経理法人税額は、法人税法70条で、その後の事業年度の法人税額から控除する、と規定されている。

 

 本例では重加算税が課された事業年度の翌事業年度内に処分がされたので法人税法135条2項が該当し「更正の日の属する事業年度開始の日前1年以内に開始する事業年度の所得に対する法人税額で更正の日の前日に確定しているものがあるときは、法人税額に達するまでの金額を還付する」と定められている。

 

 納税者法人が隠していて税務署により増額更正された1700万円が原因で納付税額はその分だけ増加したが、ここから2000万円に対する「仮装経理法人税額」は控除される結果になる。納税者法人が隠した1700万円の追徴税額と、税理士が計上した2000万円に対応する仮装経理法人税額は結果として精算されるのである。

 

(実際には更正の日を含む事業年度の2期前にも仮装経理をしていたので2期前の「仮装経理法人税額」は「修正の経理」をした上で法人税法70条にて、後の事業年度の法人税の額から控除される。

 この修正の経理は「過年度遡及会計基準」に従い2期前に遡って過大申告を「修正再表示」する方法によらなければならない。

 

<次回予告>

 修正の経理や修正再表示の手順を通じて「問題の制度設計」との関連を見てきたい。

 

 

- | 08:11 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場・・・12

(問題の制度設計・・・6)

 

「問題の制度設計」によれば非違があった場合には加算税を税理士に賦課するという。この制度は

1・「申告の基礎になる情報を会計帳簿などから集めること」を要件としているが1700万円の除外分は税理士は知らないから該当しない。

2・「法令等の動向を知ること」に関しても該当するかしないかは判然としない。

3・「採用しうる処理方法」についても、売上除外を税理士は知らないから助言しようがないが、後段の「申告書の内容を説明すること」に関しては「説明していない」と言える。申告内容を説明すれば当然に仮払金計上額を売上原価に振替え加算したたことや売上高に2000万円を追加計上した事実を話さなければならない。話せば会社は異議を唱えたであろう。

4・リスク説明については、実施したか否かは判然としない。申告書全体の税務リスクもした形跡はない。

 

 以上のようにこの税理士は「問題の制度設計」がいう適正な申告書を作成しているとは言えない。なので納税者法人に成り代わって加算税を負担するとの結論になる可能性がある。

 

(この税理士が負担する加算税の額はいくらか)

 納税者法人は1700万円を売上から除外し、税理士が勝手に2000万円を売上に加えたので納税者法人には非違はない、よって加算税の負担はありえない、というのが納税者法人の主張であったが不服審判所にて棄却されたことはすでに述べた。

 

 結局、加算税の計算基礎になる金額は仮装隠蔽された1700万円である。重加算税35%が課されるので595万円が負担税額である。不服審判所の採決では税理士のした2000万円は重加算税の計算基礎にはならないので、納税者法人が595万円を負担することになるが「問題の制度設計」によって判断すれば異なる結果になる。

 

 問題の制度設計では「適正な申告書を作成した場合」は免責されると読める。瑕疵ある申告書は「適正な申告書」と言えないからこの税理士は595万円負担すべきことになるが、本ケースの場合、瑕疵は納税者法人が原因であって、この税理士には関係はないことを証明すれば税理士は免責される、との考えも生じる。

 

 本件税理士は依頼者とのコミュニケーションがない点で稀な税理士かもしれないが1〜4を実施していても税務調査で非違が見つかる場合がある。税理士が「問題の制度設計」に嵌まらないためには自己の立場に関しての立証が必要になる。

 

<次回予告>

 終局には売上除外された1700万円は税務署の手で(増額)更正された。税理士が勝手に計上した2000万円は一種の粉飾であるから「修正の経理」を行った後、該当税額分は還付されると考えられる。

 この手続きを通して、税理士に「問題の制度設計」が重加算税を課す余地があるのかについてさらに分析してゆく。

- | 08:36 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場...11

(問題の制度設計・・・5)

 

(依頼者と税理士の間にあるもの)

 納税者と税理士は争うものである、との認識が必要である。払いたくもない税金の申告書作成を依頼して何も問題が無くて当たり前、もしミスがあればタダでは済まない。加算税の負担をはじめ不足税額の弁償を求められる。憎い「税」への怨念が税理士に当てられる。たいていの場合は契約も解約になる。

 

 ただ新たに税理士を探すことも面倒なので税理士が謝罪して溜飲が下がればそのまま契約を継続する場合も多い。新規に探し当てた税理士がもっと出来が悪いこともあり得ることも視野に入れての判断である。当然のことであろう。

 

 世間では税理士を「先生」と呼ぶのが通例であるが、この言葉を真に受けてはイケナイ。指導者としての意味ではない場合の方が多い。慣習でセンセーと言っていると思った方が勘違いしなくて良い。

 

 犬のように従順で羊のように逆らうことなく、ロバのように黙々と仕事をするタイプの「おとなしい」税理士には、経営者は面と向かってハラの底に持つ感情を出さない。そのくせ蔭では悪口を言いまくっている。わたしは自分が税理士であることを表に出さないで異業種の人々と交流するのでイロイロ耳に入ってくる。「そうですかあー」と聞き流している。

 

 私は「おとなしい税理士」は性分に合わないので依頼者にまともに問題点を指摘する。

一歩も引かないためケンカになる。ここが重要である。ケンカして相手の「究極の本性」をしっかり見ないとこちらが足元をすくわれることになる。

 

  最良はケンカすることではなく穏やかに諄々と依頼者が外道に落ちないように、時には例え話や「最悪の場合ににどうなるか」などを話すことで、おのずから「ではこの件の処理方法は先生のお勧めになる道を選択します」との言葉を引き出せれば成功である。それができない場合はこちらから「引かせていただきます」と言って関係は終了する。

 

 修業時代に今は亡き師匠から「悪魔に魂を売るな」としつけられた。いま思い出しても有難さに涙がこぼれてくる。その後、税理士登録後も「自分が依頼者の立場であれば税理士にどうしてほしいか」を自問自答し、その答えを指針にして依頼者に応対してきた。

 

 本件の税理士からは依頼者の立場に立って、の視点が感じられない。たとえ相手が机の引出しに売上除外金を隠していることを知らせないような依頼者であっても説明すべきは説明しなければ仕事は完結しない。

 

<次回予告>

 このような実態の税理士に「問題の制度設計」が適用された場合に生じる問題点を検討する。

- | 08:16 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場・・・10

(問題の制度設計・・・4)

前回に指摘した点以外に「問題の制度設計」と「税理士の行為」の関連をみてゆく。

 

税理士の行動の問題点は以下である。

1、資料を納税者法人から税理士事務所に持ち帰ってから納税者法人に決算処理の内容に関して質問した形跡がない点

2、自分がした売上原価への振替に関して説明や告知をしていない点

3、売上高への追加計上2000万円の事実は納税者法人に知らせていない点

4、問題の制度設計3の「採用しうる処理方法などについての助言や作成した申告書の内容を説明すること」を行った形跡がないこと

5、税務リスクについて説明をした形跡がないこと

 

 素朴な疑問は依頼者である納税者法人に対しても生じる。決算資料を税理士に渡して申告まで接点を持たないのは下請け業者に対する態度に等しい。納税額に関心を持つのが普通のところ、このような納税者は稀である。

 納税額に関してその根拠も税理士に聞かないママ、税理士が知らせる税額を素直に支払う点には疑問をもつ。いくら1700万円を机の引出しに隠していたとしてもである。考えられるのは1700万円を除外しているから税理士の依頼した申告内容も納税額にも関心はなかったと考えられる。

 

 ところが税理士が2000を追加計上したことを知って仰天したかもしれない。無関心のツケが回ったと考えられる。

 結局、税務調査によって1700万円を隠していたことが見つかってから、この納税者法人は態度を変え「現金売上1700万円が洩れていたのは税理士が当社に現状の問題点について説明や指導を充分行わなかった」と審判所で主張した。

 

 初めから机の引出しに隠しながら税理士が悪いと人指し指で税理士を指弾する一方、内側に巻かれた中指、薬指、小指の3本は自分を指しているのに気が付かない。ジブンハワルクナイ、ワタシはワルクナイと言い張るのが人間である。仮に税理士が適切な質問をしても納税者法人は事実を話さなかったと考える。この税理士は依頼者に対する態度に甘さがあったのである。

 

<次回予告>

この税理士はどうすれば良かったのか、を考えてみる。

 

- | 08:34 | pookmark
納税者の品位と税理士の立場・・・9

(問題の制度設計・・・3)

 

不服審判所で「問題になった税理士の行為」と「問題の制度設計」との接点を見てゆく

 

(問題の税理士の行為:再掲

・関与先に来て整理棚に保管されていた経理書類を自分の事務所に持ち帰って帳簿や申告書の作成を行った

・支払い内容が不明の支出は仮払金・前渡金に一旦計上し、自己の判断で仕入勘定に振替えた

・決算にて仕入れ勘定が過大になったため不安になり、売上勘定に2000万円を追加計上して法人税申告書を作成し申告した

・受任した納税者法人に税務調査があり、除外された現金売上金1700万円が指摘された

・納税者法人から「税理士が除外した1700万円を上回る2000万円を追加計上したことは知っていたされた」と主張された

・更に納税者法人は「現金売上1700万円が申告で洩れたのは、税理士が当社に現状の問題点について説明や指導を充分行わなかった結果である」と主張された

 

(問題の制度設計:再掲

1、税理士は会計帳簿や取引書類など申告の基礎になる情報を収集すること

2、法令、課税実務の取扱い及び裁判例の動向を知ること

3、採用しうる処理方法などについての的確な助言や作成した申告書の内容を説明すること

4、その際、特定の処理方法を採用する場合の税務リスクとともに申告内容全体の税務リスクを示すこと

 

 税理士の行為と制度設計を見比べてまず第一に気付くことは、税理士が持ち帰った経理資料から「現金売上」は初めから(納税者法人の手で)脱漏していた点である。納税者法人は初めから税理士には脱漏させた「現金売上」のことは話していない。

 

 税理士としては勝手に会社事務室の机の引出しを開けることはできないから「事務机に隠された1700万円」には気が付かないものの<制度設計1、税理士は会計帳簿や取引書類など申告の基礎になる情報を収集すること>との関係で問題が残る。

 

 制度設計1は、申告の基礎になる情報収集を求めている。ということは網羅的な情報収集を行うことが必要である。事務机に隠された金員には気づかなくても網羅的な情報を求めるには質問し、キャッシュの出入りをチェックし、預金間の資金移動、現金売上の対応する仕入・在庫の存在と動き、粗利益率の年次比較などは実行可能である。

 

 この意味からは制度設計が求める水準は妥当である。税理士は、網羅的な情報を求めた行為の「証跡」を文書によって自ら保管することで不服審判所での「濡れ衣」を防ぐことができたと考えられる。残念ながら税理士の行動からは経理の下請けの姿勢しか感じられない。

 

 税理士に、あれこれ聞かれたり確認されることを露骨に嫌がる納税者は多い。「おとなしい」税理士が好まれる風潮は否定できない。しかし問題が起こったときに納税者は本性を現す。

 

<次回予告>

制度設計が税理士に求める他の点についても検討してゆく。

 

 

 

- | 08:01 | pookmark

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